佐賀市木原の矢ヶ部医院│医療法人純伸会

レビュー NHKドキュメンタリー 末期がんの”看取(みと)り医師”死までの450日


院長ブログ3

看取りについて考える

NHKドキュメンタリー 末期がんの”看取(みと)り医師”死までの450日

2017年9月18日にNHKで看取りについて極めて示唆に富んだ番組が放送されました。

https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/92935/2935010/

国立がんセンターで癌患者と向き合い、実家の寺を継がれたのを機に寺の境内で緩和ケアを行う診療所をされてあった医師であり僧侶でもあった田中雅博さんが膵臓がんとなられ、人生の最期までを追ったドキュメンタリーです。

まず見終わった後に私の口から出た言葉は「よく撮って、作って、流したね。プロデューサー。」でした。最後のあたりでプロデューサーの感想、「理想の死などないということがよくわかった。」というところでは「その通り。」とつい言葉が出ました。

番組を見て考えたこと。

医師が、他人が、患者さんの理想の死を考えるなんて、そのこと自体がおこがましいという意識は忘れてはいけないと思います。

でも医師は、多くの死に携わった、人の死を法律的には決める責任者として、死についてどう考えていいのかわからない人々、患者さん本人やその家族に自分の人生をかけてアドバイスをする役割を持っているのだと思います。

私が患者さんやその家族にお話しする時には考えられる対応をなるべく考えるだけお話しして、その上で家族が迷ったりしてアドバイスを求められたら自分なら、自分の家族ならこれを選ぶという選択をお話しします。ただし私は自分や自分の親なら延命のためだけの胃瘻はお断り、食べられなくなったら寿命というポリシーを持っていて、例えば父が患者の場合なら母や妹や弟と意見を合わせることができたら延命のためだけの胃瘻は絶対にしません。自分が患者なら妻や子供には胃瘻をしないようにお願いします。(急性期の一時的な胃瘻は別です。)しかし、そのポリシー自体を押し付けることはしてはいけませんから、命をどう考えてどこまで頑張るかを尋ねるようにしています。

どんな緩和治療をしても苦しみが取り除けない状態の方でも苦しみが長引いてでも生きていたい人はやむを得ず苦しみながら生きていくことを選ぶのも本人の自由です。

家族が、苦しくても生きててほしい、生かしたいとおもっている状況で本人が身動き取れなかったり意思表示をできない場合、苦しくても生かしておくという道を家族が選ぶんだったら、もし本人が延命を希望していないような場合には本来は本人の意志に沿うべきで、家族のエゴだなとはおもうけれども、そんな家族を持ったことを幸か不幸かわからないけども仕方ないと思って苦しい時間を過ごす患者さんがいてもそれはそういうこともあると思います。(なんか表現がいまいちですが、うまく表現できません・・・。)

結論

理想の死などないと思います。それを田中先生は身をもって教えて下さいました。

 

今のところ再放送の予定は発表されていませんが、有料でよければ216円でNHKオンデマンドでは視聴することができます。2017年10月2日まで購入可能です。

 

2017年9月21日 矢ヶ部伸也