実はタバコの煙もpm2.5 ! タバコでおこる怖い肺気腫
院長ブログ9
当院ではタバコを吸う方には禁煙をお勧めしています。
タバコの害
タバコは毒です。いろんな臓器を傷つけてしまいます。全身にダメージが蓄積していきます。脳、眼、心臓、喉、食道、肺、胃、膵臓、腎臓、膀胱、子宮、骨など様々な部位で病気が増えることが明らかになっています。このブログの中でもタバコによって起こりやすくなる病気について解説していきます。
肺気腫(COPD:慢性閉塞性肺疾患 に含まれる病気の一つ)
今回は肺気腫についてのお話です。肺気腫はタバコを吸うことで徐々に進行する病気です。初期のうちには病気が始まっていても症状が出ません。
肺のもともとの構造は下の図のようになっており、喉から気管、気管支を通じて入ってきた空気は肺胞にたどり着きます。肺胞は100〜200μm(1〜2/100mm)の大きさです。肺胞で空気中の酸素が毛細血管内の赤血球に取り込まれ、血液中の二酸化炭素が空気に排出される仕組みになっています。
pm2.5
pm2.5という言葉を聞いたことが有る方もいらっしゃると思います。大気汚染物質としてニュースの気象情報のコーナーで大気中の濃度の変化が報道されています。このpm2.5というのは粒子の大きさを示す言葉です。粒子が2.5μm(マイクロメートル)以下の粒子をこう呼びます(1μmは1mmの千分の1)。環境省の環境基準では「1年間の平均値が15µg/m3以下、かつ1日の平均値が35µg/m3以下」という値が示されています。タバコの煙もpm2.5を大量に含みます。産業医科大学教授の大和浩先生の測定では喫煙席のpm2.5濃度は700μg/m3まで上昇してしまうことがあったそうです。喫煙席にいると、大気汚染として問題にしている濃度の20倍の濃度の微粒子を含む空気を吸ってしまうということです。タバコを吸う時にはそれ以上の微粒子を吸うことも有るでしょう。(「実はタバコの煙もPM2.5」で検索すると更に詳しく見ることができます。)
pm2.5が何を起こすか
ある程度サイズの大きな粒子は肺胞まで届かず気管支で捕まえられてしまいます。しかしpm2.5のサイズの粒子は肺胞まで届きます。肺胞に粒子が届くと肺胞に炎症反応が起こり、肺胞の壁が溶けてなくなっていきます。肺は表面積の広さが大事なので、壁が溶けてなくなることは肺の働きが低下することを意味します。ですからタバコを吸うと少しずつ肺が溶けてなくなっていくのです。溶けてなくなった肺はもとに戻すことはできません。切断して失った指や腕のように、取り戻せないものです。
症状が出ないのはなぜ?
肺は働きとしてかなりの余力を持っています。病気でやむを得ず片肺を切除しても生存は可能です。それほど肺には余力があります。この余力のために肺が溶けても初期には症状は出ません。本人はどうもないので気づかないのです。ところが、肺がずっと溶け続けて余力がいよいよなくなってくるとちょっとした動作で息苦しくなるようになります。最初は激しい運動が苦しくなってきて、次第に階段が苦しくなり、歩くのが苦しくなり、最もひどくなると安静にしていても苦しくなります。下の図のように、余力がなくなって歩行時に使う肺の機能を余力が下回ったら歩くだけでゼーゼー苦しみます。こうなってしまって症状が出たときには肺はほとんど余力がありませんから、薬などを使ってもほんの僅かしか回復することはできません。
肺気腫にならないために
肺気腫にならないためにはタバコを吸わないことです。人によって違いはありますが喫煙のために徐々に呼吸機能が低下していきます。こういった病気にならないためにもタバコをやめることが重要なのです。
また、すでに肺気腫になっている人は直ちにやめるのがよいです。肺気腫はどんどん進行する病気ですから、今残っている肺の機能を維持してこれ以上悪化させないようにしないといけません。
喫煙習慣から離脱するのは依存症からの離脱ですから簡単ではないかもしれませんが、ぜひタバコをやめましょう。
2017/12/15 矢ヶ部 伸也