在宅ターミナルケアと余命
院長ブログ7
がんなど治療が困難な病気が進行して余命が短いと予想される時期をターミナル期と呼びます。その時期に行うケア・医療をターミナルケアと呼びます。
ターミナルケアを病院で行うか自宅で行うかということはご本人、ご家族にとっては重大な決断です。
当院では在宅ターミナルケアに取り組んでいますので、当院での取り組みと考え方をご説明します。
自宅と病院 環境の違い
自宅か病院かと考える場合には、まず「どちらが好きか」を考えてください。病院では緩和ケア病棟や得た病の専門科の病棟に入院することになります。
病院ですと集団生活ですから、起床や消灯・食事の時間・面会時間・検温の時間・風呂の時間などは病棟でのルールに従って運営されており、入院した方はそのルールに沿った生活を送っていただくことになります。看護師がナースステーションにいますから近くに医療関係者が常駐している安心感はあります。しかし24時間看護師が横で見ているわけではありませんから、急変時には誰も見ていなかったということは病棟でもありえます。このため病棟で状態が悪化した場合にはモニターと呼ばれる装置を胸などに取り付けていただくことが多くなります。
自宅ですとルールは特にありませんから、生活リズムはご本人、ご家族の中で自由に決めていただいて良いです。在宅医や訪問看護師がサポートしますし、連絡は24時間365日していただいて構いませんが、連絡してから到着までには少々時間をいただくことになります。在宅医療を経験したご家族の中には「心配で離れられなかったのが大変だった」とおっしゃる方もいらっしゃいました。一方で「入院していたらいつも病院に詰めとかなきゃいけなかったから、家で見れてよかった」とおっしゃる方もいらっしゃいました。
一律に入院がいいとか在宅がいいとか決められるものではありません。ご自身やご家族の考え方の中で環境を選んでいただくものです。
自宅と病院 治療の違い
ターミナルケアにおいては自宅と入院とで行える治療はほとんど変わりません。
薬の内服・点滴・輸血・酸素投与・尿や便の管理・痛み止めなどの薬の選択・介護ベッドのような備品など環境は自宅でも入院とほとんど同じレベルで提供できます。ですから自宅にいたから余命が短くなったというようなことはありません。むしろ自宅に帰ることで余命1〜2ヶ月と思われていた方が元気を取り戻して数ヶ月自宅で過ごされたということはざらにあります。
自由に過ごすことや自宅で家族に囲まれて過ごすこと、自分らしいの生活や家族の絆が命を長らえているのだと思います。
2017/10/12 矢ヶ部 伸也