佐賀市木原の矢ヶ部医院│医療法人純伸会

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がんによる死


院長ブログ5

当院では在宅ケア・医療に取り組んでいますが、がんが進行して治療が困難になった方のターミナルケアにも取り組んでいます。

現代の医学は科学技術の応用も進み、かなりの病気を克服できるようにはなってきてはおりますが、太刀打ちできない病態というのは残念ながら存在します。

様々ながん

がんは様々な臓器に起こります。

口唇がん・口腔がん・舌がん・咽頭がん・喉頭がん・食道がん・胃がん・十二指腸がん・小腸がん・結腸がん・直腸がん・肝臓がん・胆のうがん・胆管がん・膵臓がん・乳頭部がん・肺がん・腎がん・尿管がん・膀胱がん・前立腺がん・精巣がん・卵巣がん・子宮がん・膣がん・陰茎がん・副腎がん・耳下腺がん・甲状腺がん・皮膚がん

心臓や軟部組織や骨にも悪性腫瘍ができることがあります。

「がん」という言葉は「上皮細胞」と呼ばれる体の表面(皮膚)や消化管の表面(粘膜)、分泌腺に起こる腫瘍に対して使うため、心臓や軟部組織(筋肉や脂肪)に起こった悪性腫瘍は「がん」とは呼ばずに「肉腫」と呼びます。

がんの拡がり方

がんがもともとできた臓器(原発巣)から隣の臓器に食い込んでしまった場合(浸潤と呼びます)と、お腹の中(腹腔内)や胸の中(胸腔内)に撒き散らされてしまった場合(播種と呼びます)と、血流やリンパの流れに乗って他の臓器に移ってしまった場合(転移と呼びます)には、治療が難しくなってしまいます。

がん細胞は正常細胞とほぼ同じ構造をしていますが、正常細胞とは違って「細胞としての秩序を失っている」という性質を持っています。

正常の細胞は「いつ細胞分裂で増えるか」ということや「どういった環境で定着するか」という秩序を持っています。これは細胞が持つ遺伝子の働きで絶妙にコントロールされています。ですから、増える必要がある時には細胞分裂を行い、必要がなくなったら細胞分裂をやめ、増えなくなります。また、本来その細胞が定着するべきではない環境には入り込みません。

がん細胞はこういった秩序を失っています。がん細胞の遺伝子はそういった秩序をコントロールする部分が壊れていることが多いです。

タバコやその他の発がん性物質はこうした遺伝子のエラーを起こす物質なのです。

秩序を失った細胞はどんどん増殖して大きくなりすぎたり、周囲の臓器に食い込んだり、別の臓器に血液やリンパ液の流れを通じて移り、そこで大きくなったりします。その結果として様々な臓器障害が起こってきます。

がんが人を死に至らしめる

 

実はがん細胞は体の中にいるだけではあまり何も起こしません。もともと正常細胞だったのが遺伝子のエラーで秩序を失ってしまった細胞なので、特に初期の段階では異物が体内に侵入してきたときのような腫れたり痛んだりという反応はあまり起こさないのです。(まれに初期でも炎症や痛みを起こすことはあります。また、がんが進行してくると炎症や痛みを起こしてきます。)

ですからがんがあってもおとなしくしている状態がつづけば、健康被害がないという状況になることもありえます。「がん休眠療法」という治療を提唱している先生方もいらっしゃいます。

しかし、残念ながらがん細胞は秩序を失っているためにどんどん大きくなったり他の臓器に移って大きくなったりしてトラブルを引き起こすことが多いのです。主に以下のようなトラブルが引き起こされてきます。

消化管(食道・胃・小腸・大腸・直腸)を塞いでしまう。→食べ物が口から肛門に向かって流れなくなります。消化管閉塞と呼びます。

腫瘍がいる臓器の正常部分を圧迫する。→臓器の腫瘍以外の場所が押されて小さくなって働きが低下します。

周囲の臓器を圧迫する→腫瘍が起こっている臓器の隣の臓器が圧迫されて働きが低下したり、食べ物の流れや血液・リンパ液の流れが妨げられたりします。

臓器や血管を破ってしまう→腹膜炎や胸膜炎、出血を起こします。

胸や腹の中(胸腔内、心嚢内、腹腔内)に拡がって炎症を起こして水がたまる(胸水・心嚢水・腹水)→肺や心臓、消化管の働きが悪くなります。

骨に移って(骨転移)骨を溶かしてしまう→痛みがでます。骨折することもあります。カルシウムが溶けだして悪さをする(高カルシウム血症)こともあります。

脳に移って(脳転移)脳の働きを邪魔する→意識障害(ボーっとしたり眠くなったり暴れたりする)や麻痺(顔や手足が動かなくなる)、呼吸障害(苦しくなる・息が止まる)などが起こります。

赤血球や血小板を消耗する。

 

 

このようにがんが正常な臓器の働きを妨げてしまうことで人体が生きていくのに必要な機能を妨害してしまいます。

最終的には以下のような問題が起こって死に至ります。

消化管閉塞のための栄養低下

胸水などのための呼吸の低下

脳転移のための意識障害・呼吸の低下

出血のための貧血

骨転移のためのミネラルバランスの異常

がんが増大して起こる発熱・毒性

上記の異常が引き金となっておこる多臓器不全

 

こういった経緯でがんは人を死に至らしめます。

このような変化はがんの方の最期の1〜2ヶ月で急激に起こります。一般の方から見るとあっという間に悪くなるという印象を持たれることも少なくありません。看取りを経験したご家族の多くが「数日前までは元気だったのに・・・」とおっしゃいます。

状態が悪化し始めると我々ができる手立てはかなり限られてしまいます。痛み止めなど症状を緩和する薬は適切に使っていきますが、病気の方ご本人やご家族の心を襲う苦しみは取り除くのは難しいことです。次のブログではそういった心の苦しみに対しての取り組みをご紹介します。

 

2017/10/12 矢ヶ部伸也