新型コロナワクチンはぜひ打ちましょう2021/5/21
新型コロナウイルスワクチンについての様々な意見
新型コロナウイルスワクチンを打つか打たないかは、様々に迷っている方がおられ、私のブログ(新型コロナウイルスワクチンを打つか打たないか)まで閲覧数が伸びるという現象となって驚いています。それほどワクチンを打つか打たないか迷っている方が多いということだと思います。世の中には医師の中にもワクチンを打つのは慎重にしたほうが良いなどと公に発言する方もいて、一般の方はどうして良いかわからないかもしれません。
そもそも、ワクチンとは?
いろいろな本がありますが、「小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK」森戸やすみ、宮原篤著 内外出版社 がワクチンについてわかりやすく説明してくださっています。ワクチンについて詳しくお知りになりたい方はぜひお読み下さい。感染症は人間の歴史の中でたくさんの人の命を奪ってきた病気です。種痘に始まる人間と感染症との戦いの歴史など、わかりやすく書いてくださっています。ワクチンは、「病原体そのものや病原体の一部や毒素などを体内に取り込んで免疫をつける」という細菌やウイルスと戦うためのやり方です。
今回のコロナワクチンは?
今回のコロナワクチンはメッセンジャーRNAワクチンと呼ばれる、新しい仕組みを使っているものです。メッセンジャーRNAというのは、細胞が遺伝子(DNA)からタンパク質を作るときに出来る物質と同じものです。もともとの細胞内での仕組みとしては、DNAからmRNAが合成されてそのmRNAからタンパク質が合成されるという仕組みで植物、動物の体はタンパク質を合成しています。今回のワクチンはその仕組を利用して、ウイルスのタンパク質が合成されるmRNAをワクチンとして注射しています。アメリカ合衆国やイスラエルなど諸外国で数百万人の投与がすでに行われて、アレルギーなどの症状が報告されているものの、ワクチンとして容認されされうるレベルの副作用にとどまっています。
新しいワクチンの仕組みは怖いのか?
「mRNAを注入するなんて!遺伝子操作だ!」という意見の方もいらっしゃるようですが、体外からRNAを注入されるという点では、ウイルス感染も同じです。ウイルスはウイルスのRNA(ウイルスの種類によってはDNA)を持っており、ウイルス自身では自分のタンパク質やRNA(もしくはDNA)を複製することはできません。ウイルスがヒトを始めとした動物や植物の細胞に感染してウイルスのRNAやDNAを宿主の細胞に取り込ませ、宿主の細胞が入ってきたRNA(もしくはDNA)を複製してウイルスタンパク質も作ってその結果ウイルスが増えてゆくのがウイルス感染症です。ですから、外因性のRNAが体内に入ることがすぐに突然変異やヒトの体の異常を起こすと心配するのは、心配のしすぎです。そんなことがすぐに起こるのであればこの世にこんなに植物や動物は繁栄していないでしょう。ただし、今回のワクチンについては歴史が浅いということは間違い無いので、慎重さは必要です。慎重さは必要ですが、ワクチンのメリットとデメリットを冷静に比較してメリットが高ければワクチン投与を考慮するべきです。後述しますがコロナワクチンによる被害者はこのままコロナウイルス感染症が広がればもっと増える恐れがあります。それを防ぐメリットは、ワクチンの副作用の恐れのデメリットを上回ります。
コロナウイルス感染症は怖くない?
「コロナウイルス感染症になる恐れ、またそれで亡くなる可能性はかなり低いのに・・・」とする論調の記事はたまに見かけますが、思い出してください。令和2年2〜4月頃コロナウイルス感染症禍が始まった頃は、数人単位でも死者がでたら大騒ぎしていました。いまは毎日100人前後の方が亡くなっています。緊急事態宣言で人々の往来を減らして感染者をへらすことで死者が増えないようにと工夫していますが、緊急事態宣言も繰り返されて人々の行動のコントロールが甘くなり、一方で変異種が増えて感染症の威力が増している今、死者はもっと増えると予想しています。今までの経緯から考えて、200人/日くらいまでは増えるでしょうし、最悪ですと1000人/日くらいの死者までは増えるるかもしれません。ワクチン接種が広がらなければそれはもっと増える可能性も考えられます。私が昨年4月に作成した資料にも、このままだと死者が増える恐れがあると書いていましたが、その頃は日本人の死者は1日数人程度で、日本人はあまり死なないウイルスで良かったなどと言う論調の記事が多く、なんと楽観的なんだろうと思っていました。なんとかワクチン接種が始まりましたから、その効果が出ればそこまで死者が増えずに済むかもしれませんが、ワクチンを打つ必要がないと書いている人々は楽観的すぎます。
ワクチンの効果・価値は見えにくい
ワクチンの効果や価値は見えにくいものです。ワクチンを打って病気が予防できるようになると、「その病気を体験した人」がいなくなってゆきます。そうすると、「身近な人にそのような病気の人が居ない」人ばかりになります。人は物事の判断のときに「身の回りを見渡して、身近な人の体験から学ぶ」ということをすることが多いです。ですから、「友人が大腸がんで亡くなったから大腸がんの検査をしてほしい」と言って検査を希望する方は結構いらっしゃいます。「国立がんセンターの年齢別がん罹患率のデータを見て、50歳以上の男性の大腸がん罹患率が高いから心配」と言う人はまれです。身の回りの体験から自分の行動を決定するということの例です。身の回りに感染症で苦しんだ人が居ない方にとっては、ワクチンの価値は感じにくいものになるでしょう。
見えにくい価値を大切に考える例
自動車を運転する方なら自動車保険に入っていらっしゃると思います。自賠責は義務付けられていますし、それ以外にも対人賠償保険を任意で加入していらっしゃる方は多いと思います。万一事故が起こったときに、賠償金が高額になることを考えると、保険金を支払って安心を買う価値はあると考えられると思います。新型コロナワクチンも、価値が見えにくいという点では似ています。ウイルスそのもものも見えませんし、身近な方でコロナウイルス感染症に感染した方が居ない人のはコロナウイルス感染症の怖さは理解しにくいものでしょう。ですが、毎日1000人単位で患者が発生し、100人前後の人が亡くなる病気というのは、恐ろしい病気です。たとえ身の回りの知っている人にコロナ感染症の人が居なくても、「自分は関係ない」とは決して思わずに、「いつか自分の身の回りでも起こるかも」と考えて下さい。交通事故が心配で自動車保険に入るように、自分や家族がコロナウイルス感染症に感染してしまうのを心配してワクチンを受けていただきたいと思います。
ワクチン接種は自分を守るためだけではない
ワクチンを摂取することはあなたの身を守るだけではありません。あなた自身はコロナウイルス感染症に感染しても軽くて済むかもしれません。しかしあなたが媒介して、家族や友人、大切な人を感染させ、その方が苦しんだり、最悪亡くなってしまったりする恐れがある病気なのです。インフルエンザワクチンの研究でも集団免疫という効果が確認されています。小学校でインフルエンザワクチンの集団接種を行ったら、その家族のインフルエンザ死亡率は下がったという研究もあるのです。誰でもワクチンをするのは怖いとまずは思うでしょう。でもその怖さを超えて打つ価値があります。ぜひワクチンを打ちましょう。
2021年5月21日 矢ヶ部医院 矢ヶ部伸也
関連記事 私もワクチン受けられますか?2021/05/21