佐賀市木原の矢ヶ部医院│医療法人純伸会

6回目のワクチンはもう受けませんとおっしゃる方


こんにちは。矢ヶ部医院の矢ヶ部です。

佐賀市では5月8日から6回目(人によっては5回目や4回目の方もいらっしゃいます)の新型コロナワクチン接種が始まりました。当院でも少しずつですがワクチン接種を行っています。

最近、高齢の方でも「もう6回目のワクチンは受けません」と仰っている方が増えていると聞きました。

ワクチンを打つかどうかは個人の判断に委ねられていますので、「ワクチンを打たない」という決断は尊重するべきものだと思っています。

ただ、ワクチンを打たないとどう不利になるかを本当に理解されているのか、心配になっています。

もし、ワクチンを打たずに過ごしていて、新型コロナウイルス感染症が増え、うつってしまって重症化して命を失う危険にさらされたときに、「ああ、あの時ワクチンを打っておけばよかった・・・」と後悔しないという覚悟で決めていらっしゃるでしょうか?

当院では新型コロナの患者さんの入院治療を担当することは有りませんが、そういった病棟で患者さんを担当している医師と話をしたことがあります。重症化して入院してきた患者さんの情報を受け取った時、「この患者さんはワクチンを打っていません」という情報のときには、担当医は「厳しいかも・・・」と思うそうです。「この患者さんはワクチンを打っています」という情報のときには、「じゃあ、助かる見込みがあるかも・・・」と思うそうです。実際にワクチンを打っていない方々が亡くなりやすいからです。

下の図は2020年1月から2023年4月25日までの新型コロナウイルス感染症で亡くなった方を年代別に集計したグラフです。40代以下と50代以上で明らかに死者数が変わっています。10歳未満や10代の方での死者数は男女それぞれ20人未満です。小児科の先生に聞くと、新型コロナウイルス感染症よりもインフルエンザのほうが子供には死者は増えやすいと言えるそうです。ですから、40歳以下の世代では新型コロナウイルス感染症をインフルエンザ同等に扱うのは理にかなっています。

ところが、50代を超えて、60代、70代と年齢が上がるにつれて死者数は増えています。80代男性は14000人近くの方が亡くなっています。2020年の統計では80歳以上の人口が1200万人(男女合わせて、90代を含む)ですから、80代男性は少なめに見積もっても500人に1人は今までに新型コロナで亡くなっていることになります。50代を超えた方々、特に70代、80代の方々にとっては、新型コロナウイルス感染症はインフルエンザとは比べ物にならないくらい致死率の高い恐ろしい感染症なのです。

このことから、新型コロナウイルス感染症対策は40代以下と50代以上では分けて考えたほうが良いです。

若年層はインフルエンザと同様の対策で良いでしょう。子供にはワクチンも不要かもしれません。

高齢者の場合には、ワクチンはぜひ打っていただきたいと思います。ワクチンは有効なのです。副作用が酷く出るような方の場合にはやむを得ないと思いますが、そうでないならばワクチンはぜひ打ってください。

2類感染症を5類感染症に変更したのは若年層にとっては理にかなった扱いと思いますが、高齢者にとっては命の危険もやむを得ないという厳しい判断になるかもしれないのです。そして、それがわかるのは2023年末か2024年頃です。

高齢層に死者が増えてしまうかどうかは社会実験のようなものです。結果的に死者が増えなければ成功ですし、今私が書いているこの記事も杞憂に済みますが、死者がふえても「景気のためには仕方がない」と言う理論で押し切られてしまうでしょう。来年ごろに評価は出ます。それまでしっかりと高齢者は自分で自分を守る意識で行動していただくのが良いと思います。

高齢者はぜひ新型コロナウイルス感染症ワクチンを打ってください。

2023年6月8日 矢ヶ部医院 矢ヶ部伸也