処方されたのに飲んでいない薬
院長ブログ14
押し入れの中の薬の山
在宅ケア・医療のために患者さんのご自宅等に訪問薬剤師がお伺いして薬の管理や説明を行うことがあります。当院と連携している薬局の薬剤師がご自宅や老人ホームなどに参ります。薬剤師は患者さんがお持ちの残薬の確認もさせていただきます。ご自宅等でお薬をチェックさせていただくと、たまに飲んでいないたくさんの薬をお持ちの方がいらっしゃいます。
飲んでなかったけど処方は受けていた
中には、驚くほどたくさんの量の薬をお持ちの場合もあります。こういった薬は「残薬」と呼ばれています。患者さんに残薬が発生した理由をうかがうと、「副作用を感じた」「飲みたくなかった」「時間が合わない」など、いろいろな理由で飲まないことがあるようです。しかし、飲んでいないことを担当医にお話しいただけておらず、担当医は飲んでいるものと思ってずっと処方し続けるということが起こると、大量の残薬が発生してしまうようです。
飲まない薬は医師に申し出を
もし処方を受けた薬の中に、飲まないものがある場合には、必ず処方した医師に申し出てください。飲まない薬の処方を受け続けるというのは、医療資源の有効活用という視点からも問題がありますし、費用についても自己負担分、医療保険負担分どちらも無駄に増えてしまいます。
薬処方の目的を医師と共有
医師が薬を処方するときは必ずその目的と根拠があります。目的とは、例えば糖尿病の治療薬なら糖尿病の改善のため、解熱鎮痛薬なら熱を下げるためなどです。根拠とは医学書に記載された情報や医師の経験などのことです。そういった根拠をもとに目的に向かって状況を改善させることのできる薬を処方するのです。お薬の処方を受ける方々には、ご自身で薬処方の目的をぜひ知っていただきたいと思います。
薬を飲む動機
薬を飲む目的をご理解いただいている方のほうが、薬を飲む目的をあまりご存じでない方よりもきちんと飲んでいただけることが多いです。特に高血圧や糖尿病などの生活習慣病では初期には自覚症状(患者さんご本人が感じる症状)がないことが多いです。症状がないために定期的な薬の内服を途中でやめてしまう方もたまにいらっしゃいます。ところがそういった途中で薬をやめてしまった方は、合併症(高血圧や糖尿病の場合は脳梗塞や心筋梗塞、その他など)を起こす確率がかなり増えてしまうのです。合併症が起こったときに「ああ、薬を飲んでおけばよかった」となるのですが、その時はすでに病気によって体の一部が障害を受けてしまっていて、手遅れのことがあります。薬を飲む目的をしっかり理解している方は、こういった薬の中断が少なく、病気の予防がしっかりできていることが多いです。是非薬の目的をご理解いただき、健康の維持のために有効に薬を使ってください。
2018.8.23 矢ヶ部 伸也